他力と自力と

家事と育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

ラストオブラス Pert2の感想(完全ネタバレ)

今回は普段の育児関連やカメラ関連でなく、ゲームの感想を書かせていただきます。

 

最近、The Last of Us Part2(ラストオブアス2)というゲームをクリアしました。

18歳以上が閲覧条件の公式サイトがこちら。

 

www.playstation.com

 

これは2013年に発売されたラストオブアスというゲームの続編・・というか続きのストーリーなのですが、初代は当時のゲームオブザイヤーを取得するほどの名作でした。

今回その続編が7年の時を経てやっと発売されるということで、全世界のファンたちが楽しみにしていたのです。

 

ところが。

この続編のゲームが、具体的にはそのストーリーやその構造が賛否両論、特に否定的な意見の噴出が目立ったのです。

 

そんなゲームを私は事前情報をすべて遮断してやり、クリアしました。

その後他の方の感想を読んでみて、賛否両方の意見が渦巻いていることを知ったのです。

 

で、私にとってのこのゲームの感想は・・このゲームのストーリーに、音楽でも映画でも小説でも感じることができない、このゲームだからこその衝撃と感動を受けました。

賛の方の、しかも最高レベルの感想だったのです。

 

このゲームを体感して、どうしても感想を残したくなりました。

あくまでゲームに詳しくない私なりの感想を纏めただけですので、興味のあるかただけご覧いただければ幸いです。

 

注意!

以下、初代とPert2両方につきまして完全なネタバレを含む感想になります。

本当に素晴らしい大人のゲームですので、もしご興味のある方は以下は読まずに遊んでみてください。

 

前作、ラストオブアスについて

 

ラストオブアス初代は、本当に名作だと思います。

 

www.jp.playstation.com

 

簡単に物語を説明しますと。 

ゾンビ化する感染症が広まって崩壊した世界。

わずかに生き残った人間は、隔離された場所で軍の支配下に生きています。

 

そんな中、感染が表面化したときに一人娘を亡くした主人公ジョエルという中年男性が、エリーという感染者に噛まれてもゾンビ化しない、「免疫」を持っている少女と知り合います。その免疫から全世界を救うワクチンを作るために、主人公であるジョエルはエリーをファイヤフライという組織まで届けるというのが物語です。

 

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オフィシャルサイトからお借りした画像です。

左の少女がエリー。右が主人公ジョエルです。

 

感染者やわずかに生き残った無法者との闘いに生き延び、ようやくファイヤフライにエリーを届けた時に、ワクチンを作るにはエリーを殺さなければいけないことがわかります。

全世界を救うのか、エリー一人を救うのか。

ジョエルは手術直前にファイヤフライのメンバーを殺し、エリーを救います。

麻酔から覚めたエリーにジョエルは、免疫を持っていた人が沢山いたからエリーが必要無くなったという嘘をつき、それが本当であると「誓う」と話したところで物語は終わっていました。

 

ゲームの面白さもさることながら、展開される物語や答えの出ない選択を突き付けられた苦いエンディングに、非常に評価の高いゲームでした。

 

ポイント1:いきなりジョエルが惨殺される

 

初代を愛したユーザの多くにとって、ジョエルとエリーのコンビは特別です。初代から5年経った設定の時代。ジョエルは老け、エリーは大人になりました。多くの方はきっとまた二人の冒険を楽しみにPart2を購入されたんだと思います。

しかし、このゲームはそんな期待を早々に裏切ります。ストーリーのトリガーが、ジョエルが残虐に殺されてしまうことなのです。

 

ジョエルを殺したのはWLFという組織のアビーというマッチョな女性。身体がでかくてむっちりしていて、表情も非常に怖い。

アビーとその仲間たちは(その時点で理由は不明ですが)、ジョエルに対して激しい恨みを持っているようでした。その報復に殺されてしまった様子なのです。

ジョエルを助けに入ったエリーは逆に取り押さえられたまま、ジョエルがいたぶられ止め殺される最後の一撃を目撃させられます。

 

こうしてこの物語が動き出します。

エリーがアビーに対して復讐を果たすこと。これがこの物語のストーリーです。

このストーリーの軸、動機の部分は個人的には納得のいくものでした。

 

なのですが・・。

 

ポイント2:エリーの見境の無さ

 

エリーは親友(彼女)であるディーナと共に復讐の旅に出ます。

ですがある拠点までたどり着いた時、ディーナが妊娠していることがわかります。

そこからは一人での行動が増えるのですが(途中に他の味方とも合流)、WLFのメンバーに近づいてからのエリーの行動は、復讐への執着に囚われているように見えました。

 

ジョエル殺害の場所に居た他のメンバーも鉄パイプで殴り殺したり、射殺した相手が妊娠していたり。襲ってくる犬も容赦なく殺します。

 

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WLFはジョエルへの復讐を果たしはしましたが、その時にエリーは殺されていません。

なのにアビーの居場所を聞き出すため、ひとりひとり追い詰めて次々とその他のメンバーも殺していくのです。

私はプレーしている最中に、そんなエリーが少しだけ違和感があったのですが、ゲームだしそれもこのラストオブアスらしい世界観なんだなと受け入れていました。

 

ところが・・

 

ポイント3:アビーの物語の強要

 

エリーが様々な犠牲を払いながら、ようやく宿敵アビーとの対戦が実現する・・その瞬間に、まさかの出来事が起こります。

なんとゲームは、この物語のラスボスにしてジョエルを殺したにっくきアビーの物語となり、ユーザはこのアビーの操作を余儀なくされるのです。

 

ここでユーザは非常に不快な想いをさせられます。

先ず何より、私も初めての経験でしたが、憎いキャラクターを自分が操作することへの拒絶反応は大きなものでした。

さらに、ようやくストーリーが終盤に差し掛かり、早く復讐を果たしたいのに別の話が挟まれた違和感。

 

しかも、それまでにもあったようにちょっと差し込まれた話かと思ったこのアビー操作、実は全体の4~5割ほどのボリュームがあるのです。

もうゲームひとつ分、アビーでのゲームがあったのです。 

 

ここが、このゲームで賛否を呼んだ最大のポイントだったと思います。

アビー操作が不快なまま受け入れられない人がいらっしゃるのはよくわかります。ネット上では、わざと無残に死んで憂さを晴らすような動画も多く見ました。

 

ですが、私は逆だったのです。

 

視点が切り替わった

 

アビーの物語に切り替わった時、もちろん私もとても嫌な気持ちでした。

でもこの物語を進める中で、アビーは5年前に、前作の中で父親をジョエルに殺されたことがわかります。彼はファイヤフライの医者で、エリーからワクチンを取り出す手術を担当していた人物だったのです。確かに私も初代で射殺しました。

ここでアビー側の復讐の理由がわかります。アビーの側も復讐が動機であったわけです。

 

そして物語を進める中で、思わぬ視点に気付きます。

ただの敵役のモブと考えていたWLF側にも実は人間模様があること。

ただの敵でエリーとして捜査したときには殺していたワンちゃんは、普段はWLFは組織としてみんなに可愛がられていたこと。ボール遊びをするシーンなどもあります。

そしてなにより、アビーはただの怖い女ではなく、他人のために命を張って戦い続ける優しく不器用な女性であったのです。

 

このアビー側の物語を追うことで、復讐にかられただけのエリーが非常に視野の狭い恐ろしい存在に感じます。エリーのプレーで終盤に感じた違和感は本当だったこと、「ゲームってこんなもの」という視点で受け入れていたことに気付くのです。

 

 

アビーの物語は最終的にエリーとの対決に繋がり、直接対決でアビーを倒して終わります。

実はアビーは「赦す」ことを知っています(すみません。許しを学んだきっかけがあったかもしれませんが、それは忘れました・・)。

アビーは自分の大事な人をまた殺されながらも、エリーとディーナを殺すことなく去りました。

 

最後の対決

 

実は、話はまだ続きます。物語は・・つまり操作はエリーに移ります。

時は経ち、男の子を出産したディーナと共に3人で穏やかな生活をしていたエリーですが、時々ジョエルが殺されたシーンがフラッシュバックしてパニックになっていました。

どうしても復讐を果たさなければならないと、ディーナの反対を振り切ってもう一度アビーへの復讐へと向かいます。

ただその先には、別の組織に捉えられて死にかけているアビーがいました。

 

このアビーはもう「私は戦わない」と言いますが、エリーはアビーが助けていた子供の喉にナイフを突きつけてまで戦いを強要し、そして勝利します。

海の中で首を絞めてアビーを殺す寸前、エリーはジョエルの姿を思い出します。そして自分にウソをつき世界を救わせなかったジョエルに対して許したいと考えてきたことを思いだし、その手を離します。

復讐にかられたエリーもようやく、赦しを得て復讐から解放されたのです。

 

ここでエリーがアビーを殺さなかったことを納得できない人も多かったようです。

その気持ちもわかります。

 

感想

 

長々と物語の構造を書いてきましたが、ポイントは視点がアビーに移った時に、アビー側の物語を受け入れられたのかそうでないのか、それで賛否が分かれたのではないでしょうか。

特に前作に思い入れがあり、今作でも同じようなストーリーを楽しみたくで購入した方には、作品を作った会社に対しても憤りを感じるのかもしれません。

私はこのサプライズに本当に驚かされ楽しませてもらいました。

 

そして私は、このポイントこそがゲームへの可能性を感じたものでした。

いま、やたらと分断化とか対立などが取りざたされています。

善意にせよ悪意にせよ無知が原因にせよ、それを煽るひともいます。そして一度、無意識にも何かを悪とか敵とレッテルを貼ってしまったら、それを覆すほどの客観的な視点はなかなか持てません。それをSNSなどで簡単に表明できることで、分断はますます深まりやすいのかもしれません。

仮にその両方の立場を理解している人であっても、一方の人に「相手にも相手の正義があってやなぁ」と気づかせることができる人はいるでしょうか?

 

そうなんです。人は他の人の立場に立って考えること、しかもそれが「嫌い」などネガティブな印象の相手のことなど、考えることも難しいのです。

 

それをこのゲームは覆しました。

苦痛の中でアビーのストーリーを丁寧に追ったからです。

(嫌いな)相手の立場を、長時間にわたって、且つ自分の操作で、じっくりと追体験できる「ゲーム」だからこそ、この視点に気付くことができたのです。

 

そして復讐の連鎖の果てに二人が得たものは「赦す」という選択。

私にとっては納得のいくものでした。

 

これは音楽にも映画にも小説にもできない、ゲームという操作を伴って追体験できるジャンルだからできた体験だと思います。

そしてこの体験によって私は、自分が敵として思い込みをしていたこと、そしてその立場にもその立場の見方があるということ、それに気づいていなかったことに気付かせてもらったのです。

 

やたらと対立と分断が取りざたされる今、このゲームの製作陣は意図的にそれを私たちに教えてくれたわけです。

私も、反対の人たちにもその正義はあるということは理屈ではわかっていたつもりでしたが、実際に思い込みをしていたしそのうえで改めてそれを突き付けられたことで、これまでよりも少し客観的な視点を持てるような経験ができたのではないか、と感じています。

 

私はこのことに感嘆し、感動し、素晴らしい作品だと感じたのでした。

 

まとめ

 

以上の通り、私はこのゲームによって、ゲームだからこその気づきや感動を得ることができました。

本当に賛否のあるゲームであることは、今でもわかります。

例えば次回作でもう一度エリーとアビーが対決するようなことになった場合、この二人が「赦す」を得た物語を大切に追ってきた私としては、「前作への思い入れを製作陣に無碍にされた」を思うでしょう。今作でそういうことを感じた人も多かったのだと思います。

 

そもそもゲームとしてとても楽しめるうえに、色々なことを考えさせられる大人のゲームです。

もしこのゲームに興味を持たれた方は、是非初代の方から遊んでみてください。