幸せな過去というものは、確かに存在したのに2度と出会えない時間です。思い出すと、何故こんな懐かしくも切ない気持ちになるのでしょうか。
こんなことを考えてしまう、とても不思議な映画でした。
2013年 日本
監督:沖田修一
映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。
映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。
※今回はネタバレ無しです。
DVDを見終わったとき、なんというか感想が浮かばない感覚でした。
決してつまらなかったわけではないのですが、かといって面白かったのかというとそれほどでもないような。
なんとなく、幸せな気分になれたなぁ、という感じです。
自分なりに、振り返ってみます。
沖田修一監督の作品である、南極料理人やキツツキと雨でも感じた共通する要素なのでしょうか。
大きな事件はないけれども、人と人との繋がりの中で、少しずつ影響を与え合い、ほんのり成長する。
そして私は、なんとなく幸せな気分になって鑑賞を終えます。
この映画でも特に大きな事件が起きません。
ただ横道世之介という青年が大学入学に上京し、将来の道への可能性を匂わせるところまでの話と、その10数年後、世之介とかかわった当時の友人が彼を思い出す、それだけの話です。
祥子というガールフレンドもできますが、ラブストーリーでもありません。二人には劇的な出会いも、惹かれあう瞬間のドラマも、泣ける別れもありません。
ですが、こんな世之介がなぜか私を幸せにします。
私の青春時代にもこんな人がいたような、世之介のような友達がいてくれたらというような、あのころの自分がとても豊かな時代をすごせたかのような、そんな幸せにしてくれる好青年なのです。
そして祥子とのカップルはとても可愛くて、幸せそうで、この二人の関係がずっと続いてほしくなるのです。
このような淡い「萌えポイント」が、この映画には満載なのです。そして、この萌えポイントを美味しく味わえる人であれば、160分という長尺で物語の起伏の少ない映画を楽しめると思います。
世之介とこの幸せな二人がその後どうなるのか、あえて記しません。
興味があったら是非、ご覧になってみてください。