原作未読での実写版鑑賞、世界に誇れると思えるほど最高に面白かったです!
監督:樋口真嗣
2015年:日本
※以下ネタバレありなので、ご注意ください。
パシフィックリムやGODZZILLA、ジャンボ鶴田さんや入道雲など、スケールのでかいものが出てくる世界が好きだったので、仕事が落ち着いた間隙を縫って観に行ってきましたが、大満足でした!
予備知識ゼロの立ち位置
この原作が大人気なのはもちろん知っていましたが私は未見です。またいつも通り、極力予備知識は入れないまま予告編も見ないまま。「巨人がいる世界」「その巨人は人間を喰う」という程度のリテラシーで観賞しました。
結果的に、これが大正解だった気がします。
きっちり絶望
序盤、世界を守っていた壁を超巨人によって穴を開けられ、そこから通常の巨人が侵入するのですが、巨人がとにかく気持ち悪い!普通のおっさんおばさんが裸で(肌の色は異なり性器も無いものの)にやにやしながらさも美味そうに人間を喰らいにきます。
この生々しさからくる禍々しさというかおぞましさ、そして奴らは本能のまま人間を喰っているという理屈の通じず逃げ道が無い感じ、そして砲撃も効かないという圧倒的な人類の敵わなさ。
「自分がここにいたら」と思うと恐怖と絶望を感じました。直ぐに自害した兵隊がいましたが、そいつに一番共感できたというか、喰われるにしても頭を一瞬で噛みつぶされたいと思ったり、久しぶりに映画を見ていて「怖くてもう観ていたくない」と感じたほどでした。
とはいえ私も親の身。子供と共にこの状況に突き落とされたらどうしようかとか、実際の戦争ってこんなもんだよな~とか、余計なことも頭をよぎってしまったりなどなど、心底嫌な気持ちになりました。
巨人たちのいる世界は絶望の表現だと思うので、そういった意味できっちり絶望させていただいたこの序盤、本当に最高であり最低。きっとこの映画が目指したものの1つは、私にとっては満点で達成されていました。
残虐描写
巨人達に喰われる人間の描写が結構残虐です。
巨人達はそれぞれの好みに合わせてガリっと歯ごたえを味わったり、引きちぎってから食べたり踊り食いで飲みこんだりするのですが、その時に人間が絶命するまでも見せています。足だけが喰われても声が出ていたり、引きちぎられる直前の恐怖の声が聞こえたり。そして喰い散らかした手足や大量の血も見せてくれます。
このような最近の映画ではオミットしているような容赦のない残虐描写が効いていることで、「巨人に喰われたらこんな目に会う」という恐怖を蜂起させ、こちらもまた絶望感を煽るのでした。
この映画はPG12なので中学生からは見ることができるようですが、こと残虐表現に関しては苦手な人が観たらその時点できついかも、というレベルまで持ってきたように感じます。正直子供には見てほしくないと思ってしまいました。
もし実際にガリっと喰われるシーンのアップとか、もっとリアルな肉塊のシーンがあったら、見ていたら私も耐えられなかったかも・・。
ミカサに素直に驚く
最初の襲撃で、水原希子さん演じるミカサが喰われたかのようなシーンがあります。これだけの女優さんを序盤に退場させるぐらい、ガチな映画なんだな!と単純な私は思いこんでしまいました。
その2年後に、実は生きていて巨人を倒すほどの戦士となっているのが後に分かるのですが、私は普通に驚いてしまいました。
原作を知っている方であればミカサというのは重要な登場人物であることが分かったのでしょうね。それぐらいの知識すら無かったわけですが、おかげでより楽しめたような気がします。
エレンの巨人化にも驚く
映画終盤、完全に絶望的な状況でついにエレンが喰われます。
私はこれにも素直に「おーエレンは前編で退場か。リアルだなぁ~」などと思っていたのですが、なんとこの後エレン自身が巨人化して、喰われた巨人の口を引きちぎって出てくるのです。そして圧倒的なパワーと強さで、包囲していた巨人達をぶっ殺していくのです。
この展開、私はまーーーーーーーったく予想していませんで(というか原作もこういうお話なのかな?)、とにかく真正面から驚かされました。そして心からカタルシスを感じてしまったのです。
絶望と恐怖を否応なく突きつけ続けてきた相手をぶっ殺していくその姿は、人類、そして後編のストーリーに向けた希望であり(対巨人の対策が無さ過ぎて、後編ってどうなるのか心配でした)、弛緩した身体と動きの巨人どもを、その逆三角形の身体と爆発的な攻撃で破壊する強さも痛快でした。
絶望から希望へ。それが想像もしていなかった形で、しかも快楽と共に与えられた瞬間、私にとっては絶賛の映画と決定したのです。
キャストへの不満
ただし!本当に素晴らしい映画だったという前提ですが、人間パートではノイズが多々ありました。。
とにかく人間達がバカすぎるという話は「特撮モノで人間パートに文句を言うのは野暮」というマイ・ルール上大半は割愛したいのですが、その中でもどうしても最も気になってしまったのがありまして、それは主人公(ですよね?)エレンのキャラクターが最後まで良くわからなかったこと。
野暮を承知で書かせてくださいませ。
エレン役は三浦春馬さんが演じています。三浦さんは本当に端正でかっこいい役者さんですが、その三浦さん演じるエレンてこんな行動をするのです。
・自分の暮らしている世界に文句垂れて、「爆発しちゃえばいい」とか言いながら不発弾を蹴ったりする
・仕事が長続きしない
・禁止されているにもかかわらず、自由を求めて壁の外に出ようとする(しかも策無し)
・巨人の存在など信じていない
・いざ巨人が出てきたら好きな女の子を見殺しにしてしまう(これは仕方ないですが)
・この世の不幸を背負ったような顔をしている
・なんども同じやつと同じ話で喧嘩している
・家畜でいたくないと食ってかかる
・声を出すなと言われているのに、失恋して絶叫する
・未亡人に迫られて硬直する
・いろいろ傷ついてやけっぱちで巨人に挑む
これっていずれも10代の特権みたいな行動ですよね?こんな行動を見た目はもう大人として立派に成熟している三浦さんにさせているのです。そのギャップに私のカンの悪さでは観賞中はエレンのキャラが掴めず感情移入ができないまま最後まで来てしまいました。
どれぐらい掴めなかったかというと、エレンが巨人化する最後のきっかけになったのが、巨人に喰われて胃の中でさっきの未亡人が死んでいるのを見たことなのですが、迫られた時の行動の不自然さに(10代童貞と思えば納得できますが)エレンにとってその女性がそこまで思い入れを持った相手には見えなくてそれはきっかけとは気付けず、エレンの自分の命への執着によって巨人化したように感じてしまったこと。後から色々考えたら全てを奪われた彼の怒りがきっかけだったのかもと気付いたいのですが、観ている間はそこまで感じることができませんでした。
これは三浦さんが悪いわけでは当然ありません。エレンにもっと相応しい若い人を当てるか、三浦さんのルックに合わせたキャラにしてくれていればなぁと感じました。
もう一人、石原さとみさんが演じているハンジも個人的にはノイズになっていました。
ハンジは映画の中でコメディリリーフを担当している重要な役割だとは思うのですが、その可愛いすぎるお顔と行動の突飛さによって、折角構築した恐怖と絶望の世界観を彼女だけが壊しているように感じられたのです。
ハンジが原作にも存在してこういう役目なのだとしたらお門違いの感想なのですが、個人的には違うタイプで観たかったなぁと思いました。
まとめ
このブログを書く前に色々と思い返してみると、やはり人間パートはアレだしキャストはノイズになるしと言うところも大きかったかも・・とも考えるようにもなりました。
ですが私は映画観賞時は心底興奮しましたし、またここまで書いていて改めてやっぱ凄い映画だと感じています。
私はもしかしたら原作を知らなかったからこそ、巨人達の恐ろしさに打ちのめされ、ミカサが生きていたことや巨人化したエレンに驚き興奮できて、つまり初見ならではの楽しみを満喫できたのかもしれません。
そういった前提ですが、私はおかげさまで映画を観る楽しみを存分に味あわせていただきました!巨人のおぞましさ・恐怖はちょっと他では見られない、超フレッシュなものだったと思います。こういった部分は世界に誇れるレベルではないでしょうか。
水崎綾女さんのお尻強調(しかも二回)とか巨人エレンのプロレス技とか、スタッフロールの紹介や曲などなど個人的にヒットしたサービスも沢山いただけました。
この興奮をまた味あわせてくれるのか、前編で広げまくった風呂敷は納得の畳まれ方をするのか、とても不安はありますが、また情報は入れすぎないようにして、必ず後編も期待を持って観に行きたいと思います。