他力と自力と

家事と育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「ゴジラ 1954年版」 感想 ネタバレ

紛うことなき大傑作!ある意味完ぺきな映画に感じました。

 

1954年 日本

監督:本多猪四郎 (本編)/円谷英二 (特撮)

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

 

 

この夏のハリウッド版GODZILLAを観る前に観ておきたいと借りてきたものの、いざDVDを再生すると1984年版であったことがありまして、その後ずっと貸し出し中だったのですが、ようやく借りて観ることができました。

硬派な大人の映画で、いや傑作、面白かったです。「いまさらお前ごときが」シリーズではありますが、この感動を感想として残させてください。

 

時代背景を反映

この映画は1954年公開です。もちろん私も産まれていないわけですが、1945年に終戦を迎えまだ10年も経っていない時期。そして日本敗戦の大きなきっかけとなった原子爆弾を落とされた鮮烈な記憶も残っているところに、冷戦時代の水爆実験合戦が行われ、核の脅威がますます増しているころだと思います(核実験 - Wikipedia参照)。

この映画は、当時のそういった時代背景を強く表しているのだろうと感じました。第五福竜丸事件を彷彿とさせるように、最初の被害は船から始まります。そして描写としてもゴジラの通った後は火の海となり、東京大空襲を思わせます。次々と病院にけが人が担ぎ込まれるシーンも戦時中を思わせますし、ゴジラが迫る中「もうすぐ父ちゃんのところに行ける」と言っていた母子は、戦争で夫を亡くした家族のように見受けられました。

セリフとしても「疎開」や「長崎の原爆」、「原子マグロ・放射線雨」といった単語を語るシーンがあったり、ゴジラの災禍を水爆に例えたり、今後の水爆実験への警鐘を鳴らしたところで映画が締めくくられます。芹沢博士が最後の最後まで新兵器の使用を固辞するのは、原爆を産み出した科学者を非難しているのか代弁しているのか。余談ですが、3.11以降の日本人にとっても原子力は脅威となっていますが、子供にガイガーカウンターが反応しているシーンは、特別苦しい気持ちになりますね。

当時の日本人が共有していた心の重い部分を、たった一匹のゴジラという怪獣として表したその力が素晴らしいと思いました。

 

ストーリーの素晴らしさ

この映画を観ていて感じたのは、ストーリーのタイトさです。無駄な描写や話が無くて、出来事がそれぞれ意味があり次の展開に結びついています。とはいえ一本調子ではなくて、構造上ある謎が残された作りとなっていて、それが終盤明らかになるなど、エンターテイメントとしても申し分がありません。

観ていて話に引き込まれて本当に面白かった。この内容で映画はわずか97分!完ぺきです

 

人間パートの話も

この映画にも人間パートのストーリーがあります。特撮映画弱者であった私は、こちらで人間パートの話に文句をつけているのですが、このところBSでゴジラの過去作品が放送されていていくつか観れた結果、「怪獣映画では人間パートはイマイチなものであり、それに文句言っている側がわかってないんだ」と遅ればせながら気付いたつもりでいました。ですがこの映画では、この人間パートのストーリーも素晴らしかったのです。

セリフ一つ一つにも意味がある上にそれぞれの葛藤が感じられ、ですがその一つ一つが人物それぞれとにとってのゴジラの考え方を表現していて、怪獣映画としての魅力を削ぐどころか益々深めているのです。

 

ゴジラの迫力

ルックも想像以上に良かったです。

ハリウッド版のGODZILLAは私はIMAXで観賞してその迫力には大いに満足したのですが、その60年も前の映画でここまでの完成度を観られるとは思いませんでした。

多分ですが、やはり白黒であったので細かい部分は気にならないことと、ゴジラというキャラクターが「恐怖」の存在というシンプルなものだったので、表現がやりやすかったのではないでしょうか。イメージしていたものより、カッコよく感じました。

街の建造物もしっかりできているように見えました。こちらも白黒画面のメリットだったのかもしれません。

 

出演者の魅力

役者の魅力も印象的でした。私が存じていたのは志村喬さんとか宝田明さんでしたが、お二人の演技はもちろん河内桃子さんの美しさや平田昭彦さんの凛々しさも清廉とした印象で大変好ましく感じました。

 

まとめ

なんか良いと感じたところだけ並べ立てただけになってしまいましたが、それぐらい素晴らしい、私にとっては生涯ベスト級の作品でした。

タイトで硬派なストーリーとルックに加え、娯楽性もあり、ゴジラもカッコよくて何より面白い!映像も白黒でしたがかえって締まっている印象です。

私が借りたDVDは、画面が明るめで白黒でも見やすかったのですが、他の媒体のものだと違うかも。音声はさすがにクリアでないため、一回目は日本語字幕で観るのもよいですよ。