他力と自力と

家事と育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「イコライザー」 感想 ネタバレ

面白かったけど、贅沢を言えばもうちょっとカタルシスが欲しかったかも・・。

 

2014年:米国

監督:アントワーン・フークア

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

 

夜中に子供にミルクをあげた後、寝付けなかったのでPS4で映画を観ることができました。じっくり観賞できるチャンスは久しぶりで、ずっと見たかったこの映画をレンタルしました。

この映画は、めっちやくちや強い男が一人で悪をやっつけるという、よくある例のアレです。
見慣れた話ではありますが、この強い男をデンゼル・ワシントンという実力派俳優が演じるといはのはなかなか新鮮でした。

この手の映画も大好きなのですが、そんな中で私が期待してしまうのは次の4つの点です。
①主人公のキャラクターの新しさ
②悪人ども所業で、怒りを感じさせてくれるか
③「戦い」表現に新しさがあるか
④最後の敵をやっつけたら、カタルシスを感じるような設定となっているか

この辺りの感想について書き残して見たいと思います。

 

主人公のキャラクター

デンゼル・ワシントンが演じるのはロバート・マッコールという男。
映画の冒頭から長い時間を、彼の現在の状況をじっくり丁寧にに伝えるために使っています。
自宅での彼は孤独と向き合うように暮らしていること。神経質な様子、不眠症であること、そして眠れず毎晩のようにバーに行って紅茶を飲んでいること。

かといって人の世を避けているわけではありません。
日中は職場のホームセンターでは周囲と笑顔でコミュニケーションを取っていて、警備員を目指している後輩のコーチもしているという、頼れる先輩感。
さりげなく過去の話は避けている様子や、昼休みに一人で狭いところにこもっている描写もあるのですが、無理をして明るくふるまっているようには私には見えませんでした。

痛々しいほどの孤独な深夜の姿と、昼間の影はありつつも明るい姿。
私は彼のキャラクターがつかみきれないまま話を見ていました。
こういった曖昧さが演出(私が読み取れていないだけではなく)なのだとすれば、デンゼルワシントンの重厚な演技力が存分に発揮されているということになりますね。
ところどころ出てくる「正論」を本気で口にするところなど偏った正義感も感じるのですが、そういった部分もマッコールと言うキャラの広い受け皿に収まります。

序盤で丁寧に彼の人となりを説明したことによって、その後の幾多のシーンでスパイスが効いてきます。
ついでに言うと、ところどころユーモアもあります。おばちゃんたちに選別を渡すシーンの笑顔などは、ロバートにもまたデンゼルワシントン級の演技力がある設定、とも見ることができました。

①主人公の魅力については、上々の序盤に感じました。

 

悪人どもの所業

この手の映画では、悪人が酷い奴であればある程こちらのフラストレーションも溜まりますし、主人公がぶっ飛ばしてくれた時の留飲も大いに下がります。また、主人公が奴らを痛めつけるための動機にもなり、それに納得ができれば見ているこちらも安心してその暴力を楽しめるわけです。

つまり、悪人っぷりをいかに表現してもらえるか、というのが非常に大事ということです。

この映画では暴力装置が発動するきっかけが、夜の店で言葉を交わしていた娼婦アリーナが売春の元締めスラビにリンチを受け見せしめにされた、というものでした。このアリーナ役をなんとクロエ・グレース・モレッツが演じているのです!
眠れずに通っていた店で知り合い、歌手になりたいという希望を聞き、「望むものになれるんだ」などとアドバイスしたらこの有様。彼は自分の責任も感じていました。

彼はいきなりスラビの元に行き、アリーナを解放してほしいと9600ドルを持っていきます。それを断られたことでついに我慢しきれず、その場の全員を殺してしまうのです。
そりゃ健気なモレッツちゃんがこのような目にあえば、観ている我々の怒りのメーターも上がっていく!というのも確かにそうなのですが、作中でさらに酷い見せしめの方法も聞いていたし、まだまだ稼がせる=少なくとも殺しはしないと相手も言っているわけです。
「心底、こいつはぶっ殺すしかねぇ」という気分にまではさせられず、9600ドルぽっちで正面突破って流石に無策すぎないか??のほうが気になり、個人的にはイマイチな悪役でした。。

オオカミの死刑宣告では、ケビンベーコンは家族を殺されて殺人マシーンになったもんな~。

スラビはロシアンマフィアの一員でした。殺されたことでモスクワから暗殺者が送りこまれてきます。このテディという男がこの映画におけるラスボス。彼は殺害はマッコールの仕業と見破ります。一見紳士っぽい姿ですが異常性が垣間見え、「こいつは恐いぞ!やばそうだぞ!」と期待感は高まりました。

 

なのですが・・こいつがまたとんだ一杯食わせ者でして。
常にロバートに騙されるわ写真を簡単に撮られ身元明かされるわ、マフィア元締めの上司にプレッシャー受けてる中間管理職っぷりを隠せないわ・・。
マッコールの職場を襲っって人質をとって呼び出しやっと反撃に出たと思ったら、以前にやられた方法でまただまされて、人質の一人も殺すことなくあっけなく逃がされ、取ってつけたようなデンゼルのピンチ場面にも、何をやってんのか加勢に間に合うことも無く、一矢も報いることなく殺されました。。
正直途中から彼を応援してしまうような気持ちになっていましたが、こいつも雰囲気だけの奴でしたな~。

というわけで悪役どもはあまり感情を喚起してくれることは無かったです。


戦い表現の斬新さ

これは斬新さを感じました!
まず笑ったのは、スラビの店に行ってついに爆発する寸前、敵の机に置いてあるどくろの置物を神経質そうに置き位置を変えるところ。そして一度部屋を出ようとして、やおらドアをパタンパタンと開け閉めするところ。序盤の神経質そうな丁寧な説明があったことで、ピリピリした雰囲気を産む良いアクセントになりました。

彼のスタイルはその場にあるものを武器として使用するというものでした。戦いの前に周囲を観察して、どこに何かあるか、どう戦うか、そして倒すまで何秒かかるかを予測して実際に計測するというのも面白かったです。

そしてホームセンターでの戦闘は、改めて、工具は使いようによっては武器になる!気つけよう!という気にさせられました。

 

最後のカタルシス

テディを倒した直後、場面はなんと3日後のモスクワになります。もうこの時点で大爆笑(笑)。ギヤグですよね?これ。いやいや、こういうの大好きなのですが。で、次に出てくるシーンは予想通りマフィアのボスの殺されるシーン。ボスが気付くとシャワールームにマッコールが座っていて、電気をつけたり消したりしています。
この部屋にたどり着くまでの出来事は全て省略、何故かボスを感電死させた後、帰り道のところどころに死体が転がっていました。

 

この映画では驚くほどの省略が使われています。マフィアが石油で儲けていると知った次の瞬間はタンカー爆発させるシーンだったり、自分を見つけ出すために呼び出された「こいつは怖えぇかも」という男も、セリフは一言。トイレに行った時点でお役御免になってしまったり。
もはや序盤の重厚さが活きたギャグの数々!と言うわけで、カタルシスは笑いに吹き飛ばされてしまいました(笑)。

 

まとめ

マッコールはとても魅力的なキャラクターでしたが、その分敵の悪党っぷりが弱すぎたりギャク化して感じられたりなど、序盤に期待したようなカタルシスは残念ながら弱かったな~。
それでも、誰が見ても普通に面白い作品で、軽い気持ちで見たい時には最高でした!

デンゼルさんがまだまだ動けるうちに、続編が見たい!