他力と自力と

家事と育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「ツリー・オブ・ライフ」 感想 ネタバレ

いわゆる芸術系?私には意味がわかりませんでした・・。

 

2011年 米国

監督:テレンス・マリック

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

 
 

いつも通り予備知識ゼロで観賞したところ、何が何だか本当にわからなかった・・。ですのでストーリーも全部書いてしまっています。ご注意ください。ただ、ご覧になるならちょっとでも知っておいて心の準備をしておいたほうが良いかも、とは思います。

 

3つの舞台

この物語は大雑把に3つの舞台がメインとなります。

1つはショーン・ペン演じるジャックの中年時代。豪華な家にかっこいいスーツ、そして大都会の職場でマネージャーっぽく仕事をしている、いわゆる勝ち組。なのですが、このシーンではジャックは常に心ここにあらずの様子で、ときどき心情的な映像やセリフが挿しこまれます。とりあえず掴みどころがありません。

次いで大自然の映像。例えば地球誕生と生命人間の誕生までの歴史が、映像と神への問いかけのようなナレーションを時折はさみながら流れます。何を言っているかわからないと思いますが(笑)、私も全く意味がわかりませんでした。とにかくストーリーを伝える映画ではなく、もっと観念的なものの映画のようです。

そして3つ目が1950年代、ジャックが10代のころの家族との日常です。父親がブラッド・ピッド、母親がジェシカ・チャステイン。ここだけなんとか物語になっています。

 

ストーリー

ジャックは3人兄弟の長男でした。次男が19歳のときに亡くなったようです。その原因などは示されないのですが、どうやらジャックはその苦しみをずっと背負って生来ている様子。そしてふわっふわしたまま職場から父親に「あんなこと言ってごめん。父さんは努力していたよ」みたいなことを言い出します。

その後地球・生命誕生パートが長々と続いて、ようやく物語に入るのが映画が始まって約50分経ってから。

父親は非常にマッチョであり威圧的。他人を支配することを意識しています。母親は経験なキリスト教の信者であり、人を愛することを大切にしています。思春期に差し掛かったジャックはこの二人の影響を受けながらも反抗期となり様々な摩擦や親に対する不満をぶちまける中で父親が挫折を味わい、父はこれまでの価値観が間違っていたと気づきます。

するとまた現代パートになり、高層ビルをエレベータで昇っているジャックは天国(?)のような場所にたどり着き、あの頃の両親や兄弟に会います。言葉を発することはないけどどうやらわだかまりが解けた様子のジャックはエレベータを降りてきて、ちょっと口元に笑みを浮かべて映画は終わります。

 

宗教的知識が必要かも

この映画の冒頭、ヨブ記の一節が提示されます。ヨブ記などと簡単に書いてしまっていますが、私は「恐らく聖書の中の一節かな?」程度の知識しかないので、それもこの映画を難解なものにしているのかも知れません。

なのですが、私が気付かないもののキリスト教的なメタファーが盛り込まれているとすれば、あの地球と生命の誕生はその教えに反するのでは?とも考えたので、やはりよくわかりません。

 

父親の葛藤

この映画は私は全く理解できなかったのですが、唯一感情移入できたのがジャックの父親です。3人の子供、その一番目が男の子である私にとってあのジャックの親子関係は親の目線から見て本当に厳しいものでした。

ジャックの父はタフでマッチョな男です。いや、そういう男でなければならないという価値観のもとで育ち、それを実践している男。その価値観を中心に生きているので、3人の息子への教育方針もそれに準じたものになります。力が強くガタイも良く、街の有力者とコネクションを持ってリーダーシップを発揮する。そのため音楽家になりたかった夢を捨ててしまったので、息子達には「俺のようになるな、夢をかなえろ」とも伝えています。

このような父親にジャックは成長と共に違和感を感じ始めます。例えば父は抱きしめたり頭をなでたりと愛情を示しますが、そのなで方がマッチョ。その時にジャックは目を開いたまま終わるのを待っています。「その街のこども」でずっと旅をしてきた二人が最後に抱き合った時も目は開いたままでした。それは男女とはいえ甘ったるい関係に感じさせないための素晴らしい演出でしたが、今回のそれは心を閉ざしている演出に使われています。

父親に感情移入して辛かったのが、このように相手を思いやって愛している表現をしているにもかかわらず子供たちの反応が無くなってくること。子供たちからすると強権的な父親が嫌いなのに、父の側はマッチョでないと苦労するから、社会で戦っていけないから、支配される側は損をするから、そのように教育しようとしているのだと思うのです。それでも子供たちの想いとはギャップがあり、自分では気付けないままに子供に「早く死ね」とか思われる。勿論時には悪い面が出たり嫌な姿を見せることもあるでしょう、親とは言え人間ですから。子供が学校で褒められた話より自分の趣味の話をしてしまうこともあるでしょう。

でもいつも精一杯愛情を伝えてあげたいと思っている私の価値観も、いつの間にか押し付けとなり、子供の世界・世代とはずれて疎まれるようになってしまうのかとおもうと悲しい気持ちにさせられるわけです。

父親は職を失った際、自分の価値観が間違っていたことを悟りジャックにタフに接したことを謝ります。それをジャックも受け入れていました。ここは・・喜んでよいところなのでしょうか。

 

絶妙のリアルさ

画面は常にゆらゆらと揺れていてカット割りも早くて、ドキュメンタリックな映像によってリアルな世界の演出に感じます。しかも面白いのは、先ほど書いた通り価値観が間違っていた父親も、やっぱり強権的なところが抜けていないのが、荷物を車に乗せる時の息子への言い回しなどで伝わってきます。反省しても実際にはそんなに自分が変わることは無いですもんね。こんな細かいところもリアルに感じました。

逆にフィクショナルなところはとことん反リアルで、母親がたのしそうに空中でくるくると回って踊っているシーンがあったり、心象風景のような実在しない場所での場面があったりと、そのギャップも大きな作品でした。

 

まとめ

とにかく私ではよくわからなかったので、積極的にはお勧めできません。

そもそもショーン・ペン演じるジャックも大分良い歳なんだから、この歳になってまで父親との葛藤とかこじらせすぎだろ!などとも思うし、こんな映画に138分は、私には長かった。

ですが映像はとにかく美しく、クラシックを中心とした音楽も素晴らしい。芸術系と割り切って観られるならいいかもしれません。私には読み取れませんでしたが、このような映画に興味がある方や教養のある方なら何かしらの意味を受け取れるのかも知れません。