他力と自力と

家事と育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「アーサー・クリスマスの大冒険」 感想 ネタバレ

クリスマスらしく、みんなでほっこりできる映画でした。ただ、乗れない人には・・。

 

2011年:米国/英国

監督:バリー・クック/サラ・スミス

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

 

 

クリスマスという日は一生の内にずっとそばにありましたが、歳を経るに従ってプレゼントをもらう日からデートの日になり、仕事の日になって今は子供へプレゼントを送る日と様々移り変わっています。

40歳のクリスマスの未明、サンタさんが来る時間帯に娘に起こされてミルクを飲ませましたが中々寝付いてくれず、ようやく寝てくれた時には私が目が覚めてしまっていました。

そこでTV放送を録画していた、まさに同じ時刻の出来事のクリスマス映画を観賞しました。

 

序盤のわくわく感

映画冒頭、「サンタさんて、なんで世界中の子供たちにプレゼントを送れるの?」という疑問にこう答えたか!というSF的な世界観を見せてくれます。

物語は12月25日、クリスマスの未明。今まさにプレゼントを配達しているのですが、その方法が空に浮かんだ宇宙船の底に無数の穴が開き、そこから小さな人間型の妖精たちが一斉に降下してきます。そしてSWATというかスパイと言うかわかりませんが、訓練された様子で一斉に子供たちに配りはじめるのです。その様子がとてもユニークで、一気に心を掴まれました。

その配達プロジェクトをマネジメントしているのが北極の管制塔。いまやプレゼント配送業は高度にシステム化されていて、システムを駆動するこれまた何万もの妖精たちがおり、それをマネジメントしているのが現役のサンタの長男であるスティーブ。

子供が目覚めて見つかりそうになった場合にも、マニュアルに沿った見事な機転で危機を回避します。

 

現役のサンタはというと、昔ながらのスタイルで妖精たちに先導されてセレモニーのように数件配るだけ。サンタはこのシステムについていったはおらず、管制室に入るにもパスワードを覚えてなかったりしますが、クリスマスとサンタを愛する妖精たちには丁重に扱われています。そして今回はこのサンタが引退していよいよ長男にバトンが渡される、という年のようです。プレゼント配達の全ての仕事が終わり、さあサンタのスピーチで引退の表明か、という瞬間「来年が待ち遠しい」と何故か引退を撤回していまうのでした。

 

システム化されたプレゼント配達も面白かったし、時代に付いていけておらず足手まといながらもギリギリ丁重に扱われているサンタ、そして垣間見えるエゴ。これはものすごく深くて楽しい、同じSONYピクチャーの名作「くもりときどきミートボール」級かも!と期待値が上がるほど序盤はわくわくして見ていました。

 

プレゼントを忘れた!

仕事を終えた後サンタの家族で食事となりますが、どうやらこの家族が非常に仲が悪い様子。サンタは問題と向き合わず笑顔でわがままを通すようなタイプ。いつまでもその座に居座っている父を疎ましく思い、その上引退を撤回したことに怒っている兄スティーブ、そして空気が読めずクリスマスのボードゲームをやろうと言い出す弟のアーサー、さらに時代が変わったことを受け止めきれず、「わしの時代はなぁ」から始まり嫌味ばかりまき散らす前代の爺サンタ。

この微妙な家族間の関係が見せつけられている最中、事件は起こります。どうやら一つだけプレゼントの配り忘れがあり、管制塔にそのプレゼントの自転車が残っていたのです。

 

アーサーが、あ~あ

ここまで主人公のアーサーについて書いていませんでしたが、アーサーはサンタの二男なのですが、優しくて度胸が無くてドジばかり。偉大な兄には適わず、ドジすぎるが故に妖精たちからも陰口をたたかれていることも知っています。ですが、誰より誠実に子供たちのことを考えて、サンタを尊敬してクリスマスが大好きな青年です。

このアーサーは世界中から届いた子供たちからの手紙に返事を書く仕事をしているのですが、この忙しい管制塔に何通もの手紙を抱えながら入ってきます。そして混乱を招いた上忙しい兄に手紙を渡して「この子には青のぬいぐるみにしてほしいんだ。いなくなっちゃった犬が青色だったから」などと言い出すのです。

 

届け忘れたプレゼントの自転車はグウェンという少女のものでした。配達ミスについてスティーブは「一件で済んだということは、ミスの確率が非常に少いいい仕事ができた」と言いますが、グウェンから手紙を受け取っていたアーサーは「プレゼントが届かない子供がかわいそうだ」と言います。スティーブいわく、宇宙船は連続飛行は故障の危険があるので使えない。もうそのプレゼントを届けるのは間に合わない。だが優しいアーサーは引きさがりません。「サンタクロースなのだから届けるべきだ」と。

 

文章にするとそうでもないはずなのですが、この時のアーサーの描写はいきなり喚き散らし出して自分の要求のみを押しつけるように見えるものでした。私は残念なことに、このアーサーの極端すぎる態度に気持ちがちょっと離れてしまったのです。。なのでこの後、子供向けアニメに関わらず突っ込みどころにいちいち引っかかってしまうような精神状態になってしまいました。

 

ディティールが不自然

話としては見えました。アーサーが代わりにプレゼントを届けに行く話なのだろうと。で、実際にその通りだったわけですが・・。

 

スティーブの言う届けに行けない理由は「もう間に合わないから」ということですが、いやいや流石に移動手段が宇宙船1隻しかないわけじゃないだろうと。それを開発するまでの乗りものだってあるだろうし、たった一つ届けることができないというのが「そんなわけない」と思えてしまいました。

さらに、そのたった一つのプレゼントをスティーブが届けるのを頑なに拒否するのもおかしな話に見えます。たとえ父の引退撤回でイライラしていたとはいえ、あまりに不自然な取りつくしまのない態度。管制室には巨大なカウンターがあって、全世界に配るプレゼントの残り数がセットされており、配達プロジェクトはこの値が0になって終わりました。そもそも数十件は誤差の内のような描写があればまだしも、0までこだわって配っていたわけですから、ここにきてのその態度にもまた「そんなわけないだろう」と思いました。

そもそもこれだけのシステムであれば、ミスが起きた場合のバックアップの策、コンティンジェンシプランも用意されていなければおかしいと思います。勉強中のシステム監査的にはコントロールが存在しないことがありえないと感じました。

 

アーサーが届けに行く、というストーリーを成り立たせるための不自然すぎるディティールに、私はまんまと乗り遅れてしまい、そのままストーリーを追うことになってしまいました。

 

ハッピーエンド?

物語は紆余曲折あった後、アーサーの想いの強さで無事に自転車を届けることができます。そしてサンタに最もふさわしいとアーサーが来年からのサンタになることになり、父は引退を、兄はサンタを譲ることを受け入れてハッピーエンドの体で終わりました。

ですがこの冒険の途中、散々アーサーのドジさ加減を見てきた私にとっては、「あまりにもお気軽すぎる」と感じてしまいました。絶対に来年プロジェクトは失敗すると思いますし、成果を上げ続けてきた兄もかわいそうすぎます。

 

・・こんなことを書きながらも、我ながら子供向けの作品に大人げない突っ込みとは思うのですが。。アーサーがいまいち好きになれなかった私は、作品も良いところをしっかり楽しめなかったのだと思います。

 

安心して子供たちに見せられる話

ただもちろん私でも分かった良い点は沢山ありました。

最も感心したのは、サンタを信じている子供たちにも安心して見せられる作りである、ということです。ちゃんと夢を大切にしながらこれだけのストーリーにしているのだからこれは素晴らしいと思いました。

また、それぞれがダメなところを持っているサンタの家族が、少しずつ成長してやがて絆を取り戻すというストーリーもまた、良い話として子供たちにお勧めしたいもの。

細かいギャグやアクションのアクションの気持ちよさ、特に包装の手際は見ていて心地よかったのですが、そういったアニメ・映画としての演出も良かったです。

 

まとめ

序盤の素晴らしさで勝手に期待値をあげてしまい、その直後にアーサーにイライラしてしまったことで、素直に作品を見られない精神状態になってしまったのがもったいない。。

ただし、つまらない突っ込みどころを普通にスルーできれば、クリスマスに家族で観られるような素敵なアニメ作品だと思います。