スピーディー且つ痛みの伝わる、格闘アクション映画の最新進化形でした。
2012年:インドネシア
監督:ギャレス・エヴァンス
映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。
映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。
どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。
※以下ネタバレありなので、ご注意ください。
一本道のストーリー
映画の冒頭、自宅で早朝トレーニングをする主人公ラマ。傍らには初めての子供を妊娠中の妻がいます。そして父に「連れ戻してくる」と言い重要なミッションに挑む様子で自宅を出ます。
どうやらラマはSWATのメンバーらしく、そのメンバー20人でミッションが行われる場所への移動中、リーダーの巡査部長ジャカ(岡崎慎司選手に激似!)から状況説明があります。どうやら10年間も警察が手を焼いている麻薬王リヤディをとらえるために彼の城となっているビルに乗りこむらしく、直属の部下二人が強いらしいということ。そしてビルに到着すると待ち構えていた白髪の警部補と合流して乗りこみます。
ビルを見上げるメンバーが計画通り突入を開始します。ここから本戦から始まります。
以上の3つだけの場面しかこの映画にはありません。私はこの時点でこんなストーリーを想定していました。まずこの20人が主人公ラマ以外全滅した上、追い打ちで妊娠中の妻も殺されてしまい、鬼と化したラマが修行の末単独復讐劇を繰り上げる。。という過去のアクション映画や最近良く見ている韓国映画に影響されたもの。
しかしこの映画はゲームで言うなら、序盤説明を受けて初見プレイでそのままクリアして脱出するというとてもシンプルな一本道なストーリー。最後はラスボスが死んで、腐敗した警察の証拠も掴んで、ラマも生きてビルから出ることができました。妊娠中の奥さんももちろん無事でスカッとエンディングまで駆け抜けます。子供が出来て以来、母や子供が蹂躙されるシーンが心底見たくない私にとっては、最悪の展開が無かったのも非常に良かったです。
ちゃんとした映画
ストーリーはシンプルと言いましたが、高層ビル30階の中で主な舞台となるのはその中の7階8階のみに整理されています。アクションだけでグッチャグチャになる怒涛の展開のみでは無く、しっかりと話を把握しやすく作っているようでした。
画面もインドネシア映画と聞いて想定していた感じとは全く異なり、非常にリッチ。上品な印象です。
勝手に抱いていたイメージよりも遥かにしっかりした映画でした。インドネシア映画というのはここまでレベルが高いものなのでしょうか。
シラットかっけー!!
突入した序盤は計画通りに事は進みますが、侵入がバレてビル中の敵が銃で襲ってくると、SWATも持ちこんだマシンガンを駆使した銃撃戦になります。ですが味方がみるみる減ってきて手持ちの銃の弾が無くなるとラマはトンファーとナイフを駆使した接近戦を行うのですが、これがものすごくカッコイイ!トンファーを振り回して遠心力でゴツッと殴る剛の技と言うよりは、トンファーと身体の円運動を駆使して相手のバランスを崩したところにザクっとナイフでとどめをさすという柔の技が、スピーディーな攻防の中に組み込まれてガンガンと敵をやつけていく快感!これはシラットというインドネシアの格闘技だそうですが、私は完全にやられました。
関節を攻めて相手のバランスを崩すところが私には興味深かったです。もちろん素手での戦いもあり、相手もシラットの使い手が多くてこの映画ではシラットの戦闘シーンが多く出てくるのですが、私はこのトンファーとナイフ一発で相手を倒す爽快感がこの映画で最も好きなシーンでした。
いずれサブスリーという目標を達成したら、次は身体に筋肉を付けてシラットを習いに行ってみたいと本気で思いました。
ちりばめられた斬新描写
格闘アクション映画の見所は数あれど、特に斬新な描写が多いほど嬉しいものです。
私が一番気に入ったのは、ある部屋に追いつめられたラマたちが、部屋の床に穴を空けて下の階に逃れるというもの。ここまでは良くある新しいアイディアだと思うのですが、その穴に下りた味方がいきなり下の階で待ち伏せていた3人の敵に襲いかかられるのを、上からの1ショットで見せるところです。ひとつの見せ場に満足せず、更に驚きの展開を重ねてくれる心意気もすばらしい。
またラマという主人公側が二人でバカ強い相手一人と戦うというのも斬新でした。2対1の戦いのなかで、片方がとどめを刺されかけるともう片方がその最後の攻撃の手足を押さえることで、力を込めていた相手の身体が浮くように持っていかれるようなシーンも新鮮でした。
このような新しい発想がこの映画ではちちりばめられていました。大きなアイディアにも細かい工夫にも、作り手側の志を感じました。
漢!マッド・ドッグ
ラマ以外のキャラクターとして、岡崎選手似の巡査部長も男気溢れてよかったですが、最高だったのがリヤディの直属の部下マッド・ドッグ!彼は相手を銃で殺すのを良しとせず、拳同士肉体同士で戦うのを好みます。
もう一人の直属部下がラマの兄であったために、鎖で吊るしてリンチしている部屋にラマが入ってくると、彼はラマと戦う邪魔にならないように兄を鎖から外します。。と思ったら、その兄弟の間に入って2対1の戦いにするんですね。この戦いに対する狂いっぷり。しかも強すぎて、何度もラマたちはとどめを刺されそうになります。
正直それまでのラマとマッド・ドッグの描写に比べてこの戦いでのマッド・ドッグが強すぎるという不自然さはありましたが、それはそれ!彼の魅力は最高でありまさに漢でありました。
まとめ
ハイテンションの戦闘シーンだけでなく、ストーリーもシンプルかつちゃんとしていて、更に101分でやり切る、個人的には最高級の格闘アクション映画でした。
映画に集中しながらも気付く突っ込みどころも多くて、特にボスが結局しょぼいままで終わるため終盤は完全に尻すぼみだったりするのですが、それでも魅力の多さが勝っているので評価を下げるものではありません。
いま公開中の続編は日本が舞台とのこと。続編も必ず観ます!