他力と自力と

家事と育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「猿の惑星 創世記」 感想 ネタバレ

猿のCGに驚きました。

 

2011年 米国

監督:ルパート・ワイアット

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

※初代猿の惑星ネタバレにも触れていますので、ご注意ください。

 

私は猿の惑星は初代しか見たことがありません。「名作」と誉れ高くもちろん面白かったのですが、今ではなんとなくの記憶しか残っていません。それでも、惑星全体を猿が支配していて人類がとらわれている姿は人種差別のメタファーであることは私でも捉える事ができ、そのスケールの大きさやテーマの重みについてはとても印象に残っています。

 

調べたところによると猿の惑星シリーズは、初代の流れで5作+1作の過去6作品が上映されているようです。そして今回の創世記はいわゆるリブートもので過去作品とはプロットを利用しながら全く新しい作品として再構築したものであるそうです。

 

猿映像の素晴らしさ

このBDはとある休前日に0歳3カ月の娘が夜中に泣いて起きたので、ミルクを上げながら観ようとしていたのですが、妻もやってきて一緒に観ることができました。妻は過去作品は一切観たことが無いそうで、予備知識もほぼゼロです。

二人ともまず驚いたのが猿の映像のリアルさでした。猿の群れが人間に狩られるところから始まるのですが、「これって本物の猿を使ってるの?」と思ってしまったほどにリアルな姿。もちろんCGであり全編に渡って本物の猿は全く映って無いそうなのですが、圧倒的なその描写にフレッシュさを感じました。

姿だけではなく猿の表情も圧倒的でした。この映画の主人公はシーザーという猿なのですが、シーザーが葛藤し苦悩し決意するというあらゆる表情が、知性のある猿が表現するであろう表情にしか見えないのです。猿なのでセリフによる表現も出来なければ、過去人間以上の知性を持った猿の表情を見た人もいないでしょう。それなのに観ている側が自然と彼の内面を受け取れるという素晴らしい演技・演出力!シーザーはアンディ・サーキスさんという役者が演じていてその演技の上にCGを載せているそうですが、アカデミー主演男優賞を与えるべき!という声も納得の素晴らしい演技でした。

 

知性ある猿の誕生

ウィルは製薬会社でアルツハイマーの治療薬ALZ112を開発しています。実験台としていた猿が人間を越える知性を見せたことで臨床実験の許可を取ろうとしますが、その猿はプレゼン前に凶暴化して射殺されてしまいます。そですが射殺された猿は身ごもっていて、その子供をウィルが引き取ります。シーザーと名付け育てると、やがて母と同じく高い知性を発揮し手話も操れるようになります。

シーザーは青年になりますがその過程で自分がウィルと対等の立場に無いことに気づきます。首輪をされて所詮人間ではないペットであるということ。彼は知性があるが故にそのことに気づき、自分が何故産まれたのかという疑問と同じ立場の猿がいないことへの孤独さを背負い始めます。

 

脱獄もの

そんな中、認知症のウィルの父親が起こしたトラブルがきっかけでシーザーは住人に怪我をさせてしまい、霊長類保護施設に収監されてしまいます。この辺りからストーリーはぐぐっと走りはじめます。

人間と同等に暮らしてきたシーザーはこの施設に全くなじめません。檻に閉じ込められて藁の上で寝るのが初めてなら、周りは教養の無い猿だらけ。服を着ていたシーザーはいきなり攻撃されます。さらに施設を経営するランドン親子の特に息子は猿を虐待。地獄のような檻ですが、ここで映画はいわゆる「脱獄もの」の様相を呈してきます。

まず自分の地位を確立するため、別格クラスの大ボスのゴリラを味方につけて頂点に成り上がります。そしてクッキーを配って猿望を得ようとします。この辺りの知性的に工夫するものの、土台が猿的な行動はちょっとユーモラスに感じました。そして脱獄への方法を発見します。施設の広場の天井から外に出られることがわかったのです。

この一連の流れは、まさにどこかで観た脱獄モノの猿バージョン。フレッシュに感じました。

 

決別

シーザーはすぐさま脱出してウィルの元へ帰り・・とはなりませんでした。シーザーは人間に不信を抱き、一度迎えに来たウィルの手に首輪があったことで決別を決意していたのです。シーザーは懐かしい自宅でいつも外を見ていた窓を壁に書いていたのですが、それを怒りと共に消したシーンがありました。セリフも無しに強い思いを見せつける素晴らしいシーンでした。

ウィルの薬はALZ113になっていたのですが、シーザーはそれをウィル宅の冷蔵庫から奪い保養所の他の猿にまきます。そしてランドン息子に「NO~!」を突きつけた後(最高の鳥肌シーン)猿全員をひきつれて天井から脱獄するのです。

 

猿の世界の誕生

シーザー達は街へ出て暴れまわり、一部の人間どもに仕返しをした後森に向かいます。阻害しようとする人間をなぎ倒しながら。そして追い掛けて来たウィルが「俺が守る。家に帰ろう」と(ずいぶんとアレなセリフですが・・)シーザーに伝えますが、シーザーは「ここが家だ」と答えます。孤独であったシーザーがほんとの居場所を得た瞬間でした。

 

人類の絶滅

ALZ113は猿にとっては強力な知性向上への薬でしたが、人間はこの薬に対抗する抗体を作れず、死に至る恐ろしいウィルスでした。一人の感染者が死に、彼からウィルスを映されたパイロットが鼻血を出しながらニューヨークへ向かうところ、そしてそのウィルスが全世界に広まるところで映画は終わりました。

猿が力で人間を滅ぼしたのではなく、人間が勝手に自滅した結果初代の世界に繋がっていたのですね。

 

別物感

この作品、私も妻も楽しく見ることができました。なのですが「猿の惑星」という過去作品の流れとしてみると大分物足りないとも感じるかも。話がとてもこじんまりしているんですよね。

初代には壮大なテーマがあったり話は宇宙や惑星全体に及んでいたのに、今回は悪いやつは製薬会社の人間と保護施設の親子だけ。しかも結果的に殺されたのが金儲け至上主義の製薬会社の黒人所長と、ランドン息子だけ。こいつらも別にいい人間では無かったですが、ぶっころされて観ている側の留飲が下がるかと言ったらそれほどでもないような・・。シーザー達は知性を身につけて森に移り住んだだけ。人間は勝手に自作ウィルスで自滅しただけ。よく考えるとそれぞれあまりリンクしていない話であり、スケールが非常に小さいんですよね。

ですが、この作品はあくまでこれまでのものと比較するのではなく「猿の惑星シーザー編の第一弾」という位置づけで別物として考えればとても面白かったです。

 

まとめ

突っ込みどころは非常に多くて、後から考えるとスケールの小ささに気づいたり、そもそも薬の威力や開発方法などに疑問が出てきたり、ゴリラがシーザーを守ったシーンが唐突すぎるだろうと「所詮猿よのう」と思ったり・・。それでも観ている間は気付かなかったくらい物語に引き込まれて、普通に面白かったです。猿のCGには最後まで驚かされました。

いま公開中の続編「猿の惑星 新世紀」も早く観たい!映画を見には行けないから、DVDがレンタルされたら即借りようと思います!

 

余談ですがこの映画を見てから、テレビに出て服を着させられてる猿が今にも「NO~!」と言い出しそうで怖くなりました。