他力と自力と

育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」 感想 ネタバレ

後味切なくさわやかな映画でした。

 

2011年 米国

監督:スティーブン・ダルドリー

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

 

 

特徴的な題名で覚えていたので、テレビ欄で見つけた時に迷わず録画の予約をしていて、ようやく観ることができました。DVDを借りる時のようにパッケージも観ることが無かったので、本当に前知識ゼロで観ることができました。

 

役者陣の豪華さ、上手さ

とりあえず少年が主人公なのは直ぐに分かったのですが、その両親がなんとトム・ハンクスサンドラ・ブロックという超大物。そして舞台はNY。題名からヨーロッパ辺りのマイナーな映画なのだと思い込んでいたので、バリバリのハリウッド作品だったのは驚きでした。二人共にさすがの演技で、映画の脇をがっちりと支えていたように見えました。

その二人の一人息子(名前がオスカーw)を演じたトーマス・ホーンくんも見事すぎる演技に見えていたのですが、後から調べたら元々役者さんでは無くて、この一本が役者としてのデビュー作と知ってこちらもびっくりでした。

 

9.11

この映画の父親はオスカーの高い知能に対してそれに見合うような課題を与えています。例えば今行っているのは、「NYに6つ目の行政区があった証拠を見つける」こと。オスカーは他人とのコミュニケーションが苦手であり、ちょっと臆病。ブランコを飛ぶような気持ちで乗ることを勧めても、トライすることなく「帰ろう」と言ってしまいます。このことを知っている父親は人と関わることやチャンレンジすることを学んでほしいと思っていて、そんな狙いで課題を与えるようなユーモアで優しさに満ちた人でした。

その父親が9.11のあの時、たまたまWTCに居合わせて命を落としてしまいます。しかし、遺体は見つからないまま空の棺で葬儀を済ませたため、1年経ってもオスカーはその事実を受け入れることができないでいます。

この映画では9.11という事件に傷ついたある家族についての物語でした。

 

鍵の穴探し

最愛の父を失ったオスカーは、1年たってようやく入ることができた父親のクローゼットで、青い花瓶を割ってしまいます。するとその中には「Black」と書かれた封筒の中に鍵が一つ入っていました。オスカーはBlackというのが人名であること、そしてこの鍵で開けた中に父親からのメッセージがあると考えて、NW中のBlackさんに会ってそのカギ穴を探すという行動に出ます。映画は、このカギ穴探しがメインのストーリーとなります。

 

アスペルガーについて

なのですが、この聡明な少年が非常に生意気でヒステリーで、母親の気持ちすら慮らないように表現されています。父親との濃厚な関係に比べて母親との関係は希薄に見えるのですが、それにしたって「母さんのほうが死ねばよかったんだ」などとほざいた瞬間は、私の中で完全にこの少年への感情移入を拒むきっかけとなってしまいました。

なのですが、あとからネットなどで調べてみると、この子はアスペルガー症候群という病気である設定だったようです。確かに「かもしれない」ことはちょっと提示されていましたが、実際に病気について調べてみると、完全にその症状が当てはまっているようでした。症状などについては是非リンク先のWikiを参照頂きたいのですが、特にこれだけ鍵穴調査に必死になるのは思いこんだものに執着する症状の表現そのものですし、空の棺桶で葬儀をしたのを根に持つように見えたのは不合理性を避ける症状の表れだと思います。

それを知っていれば彼の行動一つ一つの必死さ、悲痛さが理解できます。そして部屋の一点をアップにするような独特の描写の理由も分かります。この映画をご覧になるならば、その前にアスペルガーという病気について少し知っておいたほうが良いかと思います。

 

執着の理由

なぜそこまで彼は父親のメッセージを求め続けたのか。それは彼と父との別れにありました。

飛行機が激突して混乱しているWTCの中から何度か、父はオスカーと話すために自宅に電話をかけています。そのメッセージが6件残っているのですが、物語の途中で5件目はオスカーがの学校からの帰宅中、既にマンションに入っていた時間だったことが提示されていて、その6件目に秘密があることは推測出来ました。

実はその6件目は既にオスカーは自宅に戻っていて電話を受けられる状況であり、父親からは「いるんだろう」と言われ続けているのに恐怖で電話を取ることができず、その父の言葉が途切れた瞬間、TVに映るWTCは崩れ落ちたのでした。彼は自分の弱さのせいで、父からの最後のメッセージを受け取ることができなかったのです。

だからここまで、必死になって鍵穴を探したのでした。

 

鍵穴の正体

結局そのカギはあるBlackさんのものであり、花瓶に入っていたのは偶然であった、つまり父からのメッセージでは無かったことが分かります。ですが、そのカギもあるBlackさんが息子に当てたものでした。オスカーの頑張りが、彼に父親からのメッセージを開かせることにつながったのです。

 

母親

鍵穴の正体が分かり、映画は終わる・・かと思いきや母親との話になります。この映画の母親は、夫を失ってからずっと元気が無くなっていて存在感すら薄かったので、「そんな立派な父親が愛していた女性」という一点のためにサンドラ・ブロックを起用しているのかと思っていたのですが、そうではありませんでした。

オスカーが一人で毎日出かけていく姿や部屋に残した調査用具から、彼が何をしているのかを推測し、彼女も同じことをして、これから会うであろう人に先に会って「こういう子供が訪ねてくると思いますがよろしくお願いします」ということを伝えていたというのです。

それによってオスカーは、ちょっと見下していた母にちゃんと理解されていたこと、自分が母に愛されていたこと、そしてあの父親が心から愛した人であったことを思い出します。彼がこの調査を通じて、そして母親のことを知って、彼は成長を遂げたのでした。

 

父からのメッセージ

オスカーはあの時のブランコの前に来ました。そしてその椅子の裏を見ると、「おめでとう」という父からのメッセージが残されていたのです。父は調査をさせてはいましたが、それを通じて本当に期待していたのはブランコに乗って高くこげるような勇気と気持ちよさを感じて欲しいというものでした。映画はオスカーが大きく気持ち良さそうにブランコを漕ぐ姿で終わりました。父の希望は別の形で叶っていたのです。

 

まとめ

後味さわやかとは感じたものの、実際に観ている間は残念ながら私にはいまいちヒットしませんでして・・。やはりオスカーの設定を掴みきれてなかったために、彼に感情移入できないままであったことが大きかったかなと思います。またテンポの悪さを感じたり、最後のお母さんの行動もむしろ夫の想いを踏みにじるものに感じてしまうなど、最後まで乗りきれないで終わってしまいました。

ですがこうやって振り返ってみるとやはり良いストーリーと思いますし、ハマる方であればとことん泣ける映画かもしれません。私も設定を把握した今ならまた違った印象を持てるとおもいます。映画はまだ削除してないのでしばらくしたらもう一度見返してみようかとおもっています。