他力と自力と

育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「高地戦」 感想 ネタバレなし

これは・・要素が盛りだくさんの大迫力絶望戦争映画でした。

 

2011年 韓国

監督:チャン・フン

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

※今回はネタバレなしです。

 

 

予告編もポスターも、こんなブログも見ないで!

そういえば私は、戦争映画って観たことがあんまり無くて、最近だとハートロッカーぐらいでしょうか。観たいと思っている作品は沢山あるのですが、なんとなく後回しになってしまっています。そんな状態で本作品を見てみました。

まずは言いたい。もしこの映画に興味があるならば、絶対に「予告編」は見ないで!ネットもこんな駄文も読まないで、できるだけ情報を避けてご覧になってください。予告編やポスターには決定的ネタバレがあります。できるだけ前情報を入れずにネットでみるなり借りてくるなりするのをお勧めします。

私は前情報を全く持たずに観ることができたので、その衝撃の展開にしっかり驚くことができました。

 

リアルな戦場描写

朝鮮戦争の停戦合意前、数ヶ月間のお話です。停戦交渉が2年半も長引いている中、南北を分ける国境線をどこに引くのか、エロック高地をどちらが占領しているかというのが大きなウェイトを占めることになっていました。既に停戦交渉に入っているというのは現場の兵士たちも知っているのですが、中々合意に達しないため、エロック高地をお互いに取り合う戦闘もまた終わらないでいます。

何といってもこの戦闘描写が非常にリアル。ちゃんとお金がかかってるリッチな描写に見えました。相手が高地にいるわけで、それを奪いに行く側は不利を承知で坂道を登っていくわけです。何パーセントかが犠牲になる前提で、残った兵士がその頂上を奪うのです。この悲惨な現場を、臨場感あふれるタッチで描いています。爆撃による爆発なども大迫力で、本当にその場にいるような気分になりました。

リアルといえば、新人が初めて戦闘に参加した際、目の前に敵がポツンと現れて1対1の状況になった時、「え、これ撃たなきゃだめなんだよね?でも殺しちゃうよね?」というような戸惑うシーンがあり、これも初めて戦場に来たらこんな感じになりそうと思いました。

 

サスペンス要素

ではこの作品は戦闘シーンの悲惨さだけを伝えているかというとそんなことはなく、盛りだくさんの要素でエンターテインメントとして本当に面白い!のがすごいところ。

話はサスペンス的要素から始まるんですね。東部のエロック高地で戦っている韓国軍、通称ワニ中隊で中隊長が韓国製の銃で戦死し、そこから国内の北朝鮮家族へ向けての手紙が送られていることがわかります。軍部は「内通者がいる」と考え、現場に調査員として韓国軍防諜隊中尉のウンピョを送ります。現場を知らないウンピョの目線が、同じく何もわからない観客の目線となるわけですが、彼が少しずつ真実へと近づくことで観客も同じように内通者の正体がわかってくるようになります。

現場に到着すると、ワニ中隊の連中はちょっと異様な感性で行動していることが分かります。冬の寒さをしのぐため、当たり前のように敵国の厚い軍服を着ていたり、ウンピョと同時に新任の中隊長として来たジェホの立てる作戦に即反対したり、挨拶の言葉をさえぎって話すやつがいたり。そして隊のメンバーも不思議です。ウンピョと同期でヨワヨワしかったスヒョクが異常に出世していたり若い大尉がモルヒネ漬けであったりなどなど。

他にも「2秒」と呼ばれている敵がいたり、映画の序盤で若く理想に燃えていたシーンがあった敵将の顔が傷だらけになっていたりなど、敵国の兵士にもキャラ付けがしっかりなされています。

内通者を探りつつも、少しずつ見えてくるワニ中隊や戦場の要素の背景。そんなサスペンス的な部分も興味を引き続けてくれます。

 

北朝鮮兵との交流

特に面白く感じたのが、現場ならではの敵国との交流でした。

彼らの異質な感性は、やはり停戦交渉が始まっているにもかかわらず戦闘を繰り返さざるを得ないという現場に長くいることで、ある種先鋭化されています。面白いのがそれが敵国であり共にエロック高地を取りあっている北朝鮮軍とも通じるものがあり、彼らは高地を取りあうたびに、地面の箱を使って物々交換をしているんですね。

最初はヒデーもんが入れられてたのですが、そのうちお酒やたばこ、絵を描いたコップを入れていたり、故郷を想う流行り歌の歌詞を入れたりなど、相手も同じ人間であることを知ると同時に、不思議な信頼感のようなものも芽生えているのがわかるんですね。

 

戦争って最悪!

敵国との交流を描いた後、戦争はますます虚しいものになっていきます。停戦合意の出来ない無能共への怒りすら、長く続く戦闘にすっかり忘れてしまったのでしょう。命を張っている現場では何故戦うのかという意義も持てずに、アメリカとソ連の代理戦争としてのみ、現場は望まないのに世界中が望んでいると戦闘し、その結果今回で死ぬか今回は生き残ったかという日々です。

最終的には敵も味方も関係無く、敵国兵でなく「戦争」に殺された累々とした死体がエロック高地を覆うような描写になります。これは監督さんの戦争はダメ!という表現ではないかと感じましたが、かと言って説教じみたものではなく、淡々と乾いたタッチなのが好感を持てるところです。

 

まとめ

戦闘シーンの迫力、ストーリーの重さ、サスペンスやコメディ、そしてとんでも展開と、あらゆる要素が詰まった本当に面白い映画でした。ネタバレ無しで書くと面白い要素を何も書けないのが悔しいところ(笑)。

戦争映画に詳しい方はこの映画が色々な過去作品の要素を取りこんでいることが分かるそうですが、残念ながらそれは無くても作品単体として楽しめました。ただ、朝鮮戦争というものについては、知っていたほうがより話がわかりやすいと思います。

韓国でしか作れないであろう硬質で人間臭い素晴らしい作品、お勧めです!