他力と自力と

家事と育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「イノセント・ガーデン」 感想 ネタバレ

美しき少女の成長譚。やっと気付いた本当の自分は・・

 

2013年 英国、米国

監督:パク・チャヌク

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

 

 

 

注意!

私は基本的にはサスペンス物はネタバレ無しで感想を書いているのですが、この作品に関してはネタバレまでの展開がとても気に入ったので、結末まで書いてしまいまっています絶対に情報は入れないままでご覧になったほうが良いと思いますので、未見の方で本作をご覧になる予定の方は、観賞後によろしければまたおいでください。

 

名前だけは聞いたことがあったのですが、全く内容を知らないままなんとなく借りてみました。ジャンルも演者も監督も知らないままの観賞でした。

 

中心となる出演者はわずか3人。主人公インディア・ストーカーを演じるのはミア・ワシコウスカという女優さん。私は初めて観た方だと思います。そしてインディアのお母さんイヴリン役がなんとニコール・キッドマン!いまだ本当に美しいですが、本作ではちょっと無理して維持している感があって、観終わってから考えると役に良くハマっていたように感じます。そして、インディアの叔父にあたるのが「オジ」マンディアス!・・じゃないか、チャールズ役のマシュー・グッド。私はウォッチメンのオジマンディアスでしか観たことが無かった気がしますが、今回以降は忘れられない役者さんになりました。

 

映画の冒頭、若い女性が田舎道を横切って草むらに向かってポッケに手を入れたまま立っているシーンから始まります。その顔は大人そのもの。

次いで、白いワンピースを着た女の子が森の中を走っています。彼女こそが18歳になったばかりのインディア。まだ何も知らない少女であるように見えます。ですがその姿に「人は自分を選べない。それを知ると楽になる。大人になって初めて解き放つことができるのだ」という本来似つかわしくないはずが、何故か映画のルックとマッチしたナレーションが重なります。

彼女が18歳になった日、大好きだった父が亡くなりました。そしてその入れ替わりのように、世界中を飛び回っているという叔父のチャールズが現れます。

このチャールズは見た目がとてもカッコ良いうえに、料理は出来るわテニスは出来るわピアノも上手いわと完ぺき、なのに得体のしれない怖い男。イヴリンは即彼に惹かれているようですが、そんな親も叔父もインディアは嫌っているようで、叔父を避ける彼女の様子をちょっとコミカルに映すシーンもあります。仰向けになって両手足を半円を描くようにパタパタさせるシーンは印象的でした。

 

ですが案の定叔父は殺人鬼でした。彼は買ってきたアイスを地下の巨大冷凍庫に入れてくるようにインディアに頼むのですが、その中にはお手伝いさんの死体があったのです。これは観客にもはっきりは見せず、そこではインディアは気付かないのですが、彼は何故そんな危険なことをするのでしょうか

 

それはあるシーンでわかります。

彼女が森で同級生に襲われた時、チャールズが現れて相手の男をベルトで拘束し、助けられました。「好きにしていい」と言われて彼女はその同級生をけっ飛ばします。その後二人は車で帰宅、彼女は泥に汚れた身体を洗うためにシャワーにを浴びるのですが。。

彼女はシャワーに打たれながら泣いているのです。実は先程の話には続きがあって、拘束されたはずの男は隙をみてインディアを倒し、襲いかかってきたのです。それを彼女の真上で見せつけるように、チャールズは後ろから男の首を絞め、首を折って殺してしまったのです。そして遺体を埋めるのに彼女も加担していて、それまでに叔父が殺人を繰り返していたのも知っていた彼女がその罪を一緒に背負わされてしまったことに泣いている・・のかと思ったら、なんと!彼女は人が殺される瞬間を思い出して自慰行為をしていたのです!つまり、泣いていたのではなく快感の表情だったのですね。彼女がイッた瞬間、この映画で唯一の心からの笑顔のような表情を見せました。

つまり、彼女は快楽殺人者であったのです。それを観客が知るのと同様、彼女自身も自覚したのでした。

 

叔父もまた、世界を飛び回っていたどころか幼いころ自分の弟を砂の穴に埋めて殺した快楽殺人者で、ずっと入院させられていました。ですが同じ血をインディアにも感じていたため、それを覚醒させたかった。だから死体を見せようとしたり、目の前で人を殺したりしていたのです。子供のころのチャールズが穴を埋めた砂の上で、仰向けで両手両足で半円を描くようにパタパタやるシーンには、鳥肌が立ちました。

 

父はそのことを知っていたので、ときどき娘にハンティングをさせては殺害の欲望を小出しに処理させていたのです。そして彼女の18歳の誕生日に退院した叔父は、父がインディアに会わせてくれないために殺してしまっていたのですね。

 

チャールズは覚醒した彼女と共に街を出ようとしますが、インディアはそれ以上に怪物化し、母を殺そうとした叔父をもライフルで射殺してしまい、一人で街を出ようとします。スピードを出しすぎていたため警察に止められるのですが、躊躇なくその首にハサミを刺し、道の反対の草むらに逃げ込んだ警察をゆっくりと追いかけて横切るところで冒頭のシーンに繋がります。最初に意味がわからなかった大人びた顔は、少女から本当の自分を知った大人のインディアの顔だったのですね。服も靴も大人のものになっていました。

 

観終わってネットで調べたところ、監督はまさかのパク・チャヌク!私はオールドボーイは人生ベスト級に好きな作品の一つなのですが(感想も書いています)、このたたみかけるように驚かされる快感はまさに通じるものがあったかもしれません。

あのシャワーシーンのシーケンスは、本当に驚かされましたし、私はああいうのが好きなようです。

オールドボーイもそうなのですが、悲しいかな一度観て知ってしまうと、この新鮮な驚きはもう二度と得られないのですよね。パク・チャヌク監督作品はまだあまり見たことが無かったので、これからもっと観てみようと思います。