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他力と自力と

育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「ミルク」 感想 ネタバレあり

DVD感想

私にとってはリトマス試験紙のような映画でした。

 

2008年 米国

監督:ガス・ヴァン・サント

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

 ※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

 

私にはゲイの友人はいません。もしかしたらいるのかもしれませんが、私はカミングアウトはされていません。なので、ほんとのゲイの方たちの考え方や感情はわかっていないと思います。さらに、私は政治的社会的知識も皆無に近いので、的外れなことばかり書くと思いますが、その程度の人間の戯言として書かせていただきます。

 

本作は、実話を映画化した話です。マイノリティの立場の人間が、権利を求め戦い、勝ち取る姿を見せる、それを現実に成し遂げた主人公のハーヴェイ・ミルク氏の伝記的な映画でした。

本作の冒頭、話の終了は示されます。彼が暗殺されたというときの実際の放送が流れるのです。つまり彼は殺されるんだ、と知っている上でみることになります。

 

とにかく主人公のハーヴェイ・ミルクさんが本当にオープンで、スマート。エンドクレジットの前に本人の写真が出るのですが、魅力的で人をひき付ける力があるように感じました。演じるショーン・ペンも魅力を最大限に表現しているのではないでしょうか。

このオープンさというのはゲイの方だからという特徴ではないようです。選挙スタッフにレズビアンの方が加わることになったとき、他のゲイのスタッフ達は排他的態度を取りました。もちろんその後は彼女を知ることでチームになるわけですが、彼がオープンであったこと、そして戦いに対して現実的であったことを感じさせます。

 

彼はまず、ゲイである事を公表します。そしてその立場から、何度も失敗しながらも議員を目指し立候補し、見事当選を果たします。

次に彼が議員として戦った相手は保守的な人々。「家族は国家の根幹。同性愛では子供ができないではないか」という理屈でゲイを認めない考え、具体的には教職にある同性愛者を性的志向を理由に解雇できるとする「条例6」を廃案に尽力します。

 

ここまでに彼は色々なものを犠牲にしています。服装や髪型も変え、愛するパートナーとも別れ、命を狙われる立場にもなります。

彼が何故ここまで戦えるのか、その理由を示すシーンが後に彼を射殺するホワイトとの討論です。酔ったホワイトが「お前がゲイだというのが強みだ」と言いますが、ミルクは「自分が付き合った相手は三人が自殺した、自分にとっては命をかけた戦いなんだ」と答えます。

その後、当時付き合っていた若いパートナーも自殺、それでも条例6を廃案とすることに成功しました。

彼は保守側人間の権化として描かれるホワイトに暗殺されて映画は終わります。

 

私はこの映画は素晴らしいと思うのですが、素直に感動することができませんでした。

なぜかというと鑑賞中、私にも急激な変化を求めない気持ちもどうしてもあると常に意識させられていたからです。私は本作では敵と見なされている保守層の気持ちもよくわかる・・というか、その当時この場所に居たら、ミルクたちの頑張りを脅威に感じていたかも、と思いました。

 

もちろん、ゲイという特定の話ではありません。本作の世界は1970年代後半、今は価値観も変わり、条例6は今の時代からみると人権を無視した酷い法案だと感じます。

ですが、今の私が常識として考えていることに、真っ向から異なる価値観を今突きつけられたとして、柔軟に対応できるか自信が無いと感じるのです。

この映画を観て、「アメリカという国は、なんでこんなわざわざ俎上に上げてしまうんだろう」と感じました。勝負にしてしまうから議論して答えを出さなくてはならないのに。

 

同性愛者同士の結婚が認められ、婚姻関係を結んでいない間柄での子供も海外などでは当たり前になってきたようですが、私にはまだちょっと違和感があります。

「子供ができないじゃないか」と問われたミルクは、「トライはしてるんだけどね」とジョークで切り替えしていましたが、回答は示していませんよね。やはり私も同じことを思います、正直。

(2015年8月3日追記。読み返してみるとこの部分の感覚は変わってきました。同性愛者同士が結婚できていいじゃないと感じるようになっていました)

 

子供が大きくなったとき、私とは異なる価値観をその世代から問われることもあるでしょう。できるだけ尊重したいと思っていますが、「これだけは譲れない」と考えている部分に触れたら、受け入れることができるんだろうか。

 

本作は、ゲイを代表するマイノリティ対、キリスト教的保守層のみが取り上げられており(選挙で当選できたことで、それ以外の存在も暗示されているのでしょうが)、私のような中間層の視点が無いと思います。

このどちらかといわれれば、ミルク側を応援したい気もするけど、保守層のほうに肩入れしてしまうかも・・というリトマス試験紙を自分に突きつけられたような映画でした。