他力と自力と

育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム」 感想 ネタバレ

人生ベスト10級の大好きな映画!でした。

 

2010年 日本

監督:入江悠

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

どんな映画を見たか、すぐ忘れてしまうので、備忘のための感想駄文です。

 

 ※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

※前作「SR サイタマノラッパー」と「ショーシャンクの空に」と「サニー 永遠の仲間たち」の話題にも触れていますので、ご注意ください。

 

 

埼玉から群馬に舞台を移し、主人公も群馬のアラサー女子達になった本作。

私はHIPHOP文化はまったく疎くて、ラップが何を表現しているのかも知りません。そんな状態で前作をみたのが大分前になってしまいましたが、普通に面白かったものの残念ながら評判ほどの感激は受けられず。自分には合わないシリーズと思い込んでいたのですが、なんとなく借りてきた2作目となる本作に、驚くことに大ヒット。久しぶりに繰り返して見直したほどの映画になりました。

 

ちょっと構えていた自分をまず驚かせてくれたのは、映画の見た目です。前作に比べずっと画面が綺麗で、メジャー感が増しました。

もう一点、前作と違っていたのは主人公達の境遇です。前作のイック達は仕事をしていない中でラップで世界に言葉を届けたいと願っているのですが、仕事と家庭に追われて自由のない立場の私としては、ある種のねたみとともに「遊び」に見えてしまって入り込めない部分がありました。ですが今作の女の子たちは皆社会人です。自分で金を稼いで生活しているのですが、その生活がどん詰まり、むしろ無職であったイックたちよりも希望が無いよな状況です。

さらに女性特有というとあれですが、三十路が迫ってきていて、その上色の無い田舎暮らし(30歳をとうに過ぎ、間もなく40の私から言わせると、「30歳になったら人生楽になるよ!」という持論があるのですが、それはさておき)。そんな人生に行き詰った人たちの話なのです。

私はこちらのほうが切迫感というか、主人公達の憤りに素直に感情移入しやすかったということでしょう。前作とストーリーの展開はほとんど一緒とのことでしたが、今作のほうがその切実さを受け止めることができて、作品が表現していることを受け取ることができたのかと思います。

 

閉そく感の中ルーティンをこなしているだけの日々に、高校時代の輝かしい思い出が蘇ります。大好なラップに夢中になっていたあのキラキラの自分を取り戻すため、当時結成していたB-hackというグループを再結成しようと奮闘するのです。

 

最初イックとトムに火を着けられたアユムが元メンバーを巻き込んでいきます。他のメンバーは当時のことなどすっかり忘れていて(「Bの部屋が観たい」というアユムの言葉に「え、マジで・・?」とミッツーが絶句するとこなんか好き)、当初は反対していたメンバーも次第に感化され、もう一度ライブをやろうという話になります。

 

他のメンバーを説得した再結成の飲み会、イック達とのラップバトルのシーン、そして選挙カーのバイトシーンなど、みんな本当に楽しそうにラップをしていて、「ラップちょー楽しいじゃん!」と思ってしまいました。自分には即興でリリック作るようなことできないけど、こんな久しぶりの人たちでもできるなら、ちょっとやってみたいとまで思ってしまいました。

 

ですが・・、ライブ代を稼ぐためのバイトで、ダサい水着を着せられプールで歌わされたあの痛すぎるシーン、もだえながらも笑っていたのですが、その直後にB-hackは分解、若い二人が離脱します。

プールでは高校時代に作った歌を歌っていたのですが(これが名作!子供たちも「シュッシュッシュッ!」とはまってます)、その当時の希望を詰め込んだ歌詞に、現在の自分たちの現実を突きつけられるという本当に苦しい名場面。韓国映画サニーの高校時代のビデオを観るシーンを思い出しましたが、映画はここまで楽しい雰囲気だったのが、このシーンを境に反転します。

 

結果夢は空中分解。残ったメンバーも去ってゆき、アユムはまたどん詰まりの生活に戻ります。「ショーシャンクの空に」で例えると、もろい壁を見つけて掘りはじめたけど、結局コンクリに当たって挫折したという感じでしょうか。将来への希望を失うだけで、日常の輝きもうせてしまうのですね。

 

そしてお母さんの三回忌の場面。前作以上にいたたまれない状況で絞り出す彼女たちのラップに、本当に目が痛くなるぐらい号泣してしまいました。そして絶対不利な状況でのイック達のラップ。必死なせいかまったく上手ないリリックに、ラップを愛する仲間を想う気持ちが伝わってきて、こちらも号泣(直前の「ヒップホップの遺伝子が~」という言葉も効いていました)!そしてすべてをさらけ出したアユムが最後に歌った「ヒップホップが好き」という想いに改めて気づく場面、その表情、本当に最高のシーンでした。

 

そしてスタッフロール。前作もそうでしたが、ここで映画で出てきた音楽が、とてもリッチな曲になって流れてきます。前作は映像が無く、この曲がいずれ叶った夢なのか、それとも妄想した理想の姿なのかわからなかったのですが、今作では綺麗な川辺で、アユム自身が歌っている姿を見ることができます。トラックはあの高校時代の歌ですが、歌詞が現在版にアレンジされていました。今の自分を受け入れて、その先に希望を見出しているのが見えて、これまた号泣。

彼女の状況は変わっていないかもしれませんが、好きなものを好きと思えることで世界の映り方が変わったように見えます。

 

私も山形の田舎出身なのですが、高校時代本当につまらなくてとっとと出ていきたいだけの場所だったのに、大人になってものの見方が変わって余裕ができて、改めて実家に帰ったりすると、空の広さも山の緑も、光指す世界が本当に美しく感じます。ってこれはちょっと違う話か。。

 

とにかくハッピーエンドも含めて本当に素晴らしい、私は奥さんにも観てもらいたいという一心で、返却した翌日また借りてきてしまったほどの、誰にでもお勧めできる映画だと思います。

入江監督に感謝!