他力と自力と

家事と育児に追われるおじさんの、日記代わりの備忘録です

「藁の楯」 感想 ネタバレ

楽しみにしていた映画のDVDを借り、ようやく観ることができました。

感想としては、とても面白かった!

 

2013年 日本

監督:三池崇史

映画は全く詳しくないのですが、好きでたまに観ています。

映画館にはなかなか行けないので、レンタルDVDでの鑑賞が主になります。

 

※以下ネタバレありなので、ご注意ください。

 

序盤は、大迫力の大型アクションエンターテインメントとして始まります。

その命に10億の懸賞金がかかった、クズといわれた凶悪犯罪者である清丸と、その身柄を命を狙う輩から守り、東京へ運ぶ銘苅。白眉は高速道路のシーンでしょう。大量のパトカーと、それをぼっこぼこに蹴散らし、吹っ飛ぶタンクローリー。お金かけている感が出ていました。

 

ですが話が進むと意外と早いうちに様相が変わってきます。この映画の本質はアクションではなく、「会話劇」になってくるのです。会話劇とは言っても、丁々発止の軽妙なやり取りではありません。

清丸が象徴する「絶対的な悪」というものに対する考え方、それをどう捉えているかを中心に、会話を通じてさまざまな登場人物が硬質な哲学をぶつけ合います。

そこが私にとっては、とても面白かったのです。

 

ストーリーは無茶と矛盾が目立ちます。いわゆる突っ込みどころ満載ってやつです。しかし、この人物とこの人物で哲学問答をさせようとするための舞台作りとしてのみそれぞれのストーリーがあるんだな、と思えてからはそれほど気にはなりませんでした。

 

清丸を何故そこまでして守るのか。

主人公の銘苅は、本作がアクション映画の体であるときは「仕事であるから」と答えます。しかしすぐに、その質問に答えることができなくなります。犠牲者が出始め、おためごかしができなくなるのです。

クライマックスシーンで、その理由とは妻が死んだ(殺された、と言ってもよい)後に自分の心を支えるため必死ですがり続けていた、ほんとうに些細な物語を守っていたのだ、ということを告白します。任務のためでもなく、正義のためでもなく、自分にとっての救いを守っていたこと、その必死さを知ったそのとき、私も涙がでてきました。

 

・・と、感動して見ていたからこそ残念だった部分も。

特に一番残念だったのが、物語の終盤、銘苅と10億殺人を呼びかけた蜷川との戦いです。お互いに地獄を見て、生きる意味すら失いかけた二人の搾り出された魂のぶつかり合いとなる会話を期待したのですが、「それで孫娘は喜ぶと思っているのか?」という銘苅の言葉が陳腐過ぎるものだったし、その後の蜷川の行動も幼稚すぎに感じます。もっと深い意味があったのに私が汲み取れていないだけだったのかもしれませんが。。

 

また、私はストーリーは会話をさせるための強引な舞台作りのためのみのものに感じてしまったせいでしょうか、私にとっては清丸が何をしようと、この男をとことん憎むような感情移入ができませんでした。清丸は悪人ではなく、善悪の区別がついていないだけの特殊な人間にしか思えなかったのです。つまり絶対悪として機能しなかった感じでした。

 

と、残念に感じた点もありましたし、ネットなどの評価が低いのもよくわかるのですが、私としては大満足でした。

三池監督さすがですなぁ。